健康情報コラム|vol.14 性と生殖に関する健康と権利と基礎体温計測
性と生殖に関する健康と権利と基礎体温計測
女性のいのちと健康を守るために活動しているNGOジョイセフは、Sexual and Reproductive Health and Rightsとは、すべての人の「性」と「生き方」に関わる重要なこととしています。その中で、リプロダクティブ ・ライツ「産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかを自分で決める権利。妊娠、出産、中絶について十分な情報を得られ、[生殖]に関するすべてのことを自分で決められる権利」を行使するためには、まず自分の身体のことをしっかり知っていなければなりません。
最近は「性的同意」の話題が盛り上がり、合意があればそれでOKと早合点してしまう人もいるかもしれませんが、「性感染」や「妊娠」に関する配慮が重要です。性成熟期の20代30代の女性だけでなく、初経前のタイミングでも更年期でも排卵があり、妊娠の可能性があります。
下の図は10歳から基礎体温を測り始めた方の長期グラフ(青線)ですが、オレンジの縦線は生理開始日となります。生理が始まる10~14日前に少しだけ温度が上昇し、排卵があったことがわかります。排卵後の高温期と思われる場所を赤の四角で囲っています。
10歳~11歳の基礎体温グラフ |
一方、次のグラフは一般的にはそろそろ更年期と言われる50~51歳の方の長期グラフです。周期はやや短めですが、定期的に生理があり、ほぼすべてで2相性(低温期と高温期)がわかるグラフです。この方は53歳くらいで周期が長くなり、最後の生理は55歳でした。
50歳~51歳の基礎体温グラフ |
これまで基礎体温は、妊娠したい人が測るものという考え方が一般的で、産婦人科のドクターからも「初経間もない頃や更年期は排卵しないことが多いので、基礎体温を測っても意味がない」と言われてきました。生理周期管理についてはスマホアプリなどで記録をつける方が増えましたが、生理が始まった日はわかりますが、いつ排卵したのか?ということは日数だけの記録ではわかりません。産婦人科のエコー検査で確認したり、排卵検査キットでチェックしたりする必要があります。また最近は妊活タイミングの分かるおりものシートなどもあるようですが、自分で確実に確認する方法は基礎体温の計測です。
基礎体温のグラフからは、排卵があったということだけでなく、そのグラフの波形から黄体の機能がわかり、卵胞がしっかり成長して排卵後に良い黄体ができたかどうか?(女性ホルモンがしっかり分泌されたかどうか?)がわかります。つまり生理周期が1周期分が終わったあとに基礎体温グラフを確認し、健康だったか?と振り返り、それをもとに、次の排卵や次の生理開始日を予測することになります。
「性的同意」も大切ですが、同時に、自分の身体を良く知り、「望まない妊娠は避ける」ことは基本でしょう。もしも人間的・経済的に未熟な中学生・高校生で妊娠したら、人生が大きく変わってしまいます。「10歳~11歳の基礎体温グラフ」でご覧いただいたように、初めての生理の前から妊娠の可能性はあります。また、わたしはもう子どもを産み終えたので関係ないわ!という人も、「50歳~51歳の基礎体温グラフ」で示したように、年齢的に更年期だと思っていても妊娠の可能性がある現実を理解してください。
基礎体温は、女性の一生をずっと見守ってくれるお守りです。
▼コラム筆者プロフィール
北沢 真澄(キタザワ マスミ) キューオーエル株式会社、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム個人会員メンバー。