健康情報コラム|vol.3 TeamBONEの活動

【健康情報コラム】 健康情報コラムは、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムに所属する専門家などが、健康・医療に関する最新情報や健康改善に向けた対策を毎月コラムとしてご紹介します。

 

 

【「天気の良い日は外へ!」】

この原稿を書いているのは、新型コロナウイルス感染拡大第5波で、いよいよ東京から病床が無くなるという危機に直面している真っ最中です。私の勤務している病院も、東京都の要請を受け、一般病床をさらにコロナ患者さん用に割り当てることとなりました。整形外科医の私はコロナ患者さんを治療して救うチームには入れないので、せめて、「今、骨折しても手術できないからね」と、外来の患者さんには普段以上に転倒予防をお願いし、電話診療を進めています。  さて、こんな世界になって思うのは「リテラシーが最大の防御力」ということです。ちまたには、コロナ感染症やワクチンに対する情報であふれています。まるで、水族館の巨大水槽の中の魚たちのように、様々な魚(情報)がうごめいています。目立つ魚が、安全で美味しいわけではなく、毒のある魚ほど目立つ格好をしていたりします。きちんと調べないと、どの魚にどのくらいの栄養があるのかはわかりません。その中から、正しい人が言っている「あの魚を食べた方がいい」という情報をもとに、どの魚を選ぶかを自分で判断しないといけません・・・水族館の巨大水槽は、食べるための魚を展示しているわけではありませんが・・・・。正しい情報を見極めて、正しく行動して、自分の生活に生かす、それが「リテラシー」です。誰も経験したことのない危機に直面した時には、このリテラシーこそが、身を守る最大の武器だと思います。「コロナのワクチンを受けたら、遺伝子が変わっちゃう」「ワクチンで不妊症になる」そんな毒魚に振り回されないようなリテラシーを、より多くの人が身に付けられたら、と思っている毎日です。

 

 

【「さあ、ジャンプしよう!」という文化】

TeamBONEは、「若い時期に元気で美しい骨になるために、自分で考え、行動できるようになる(ヘルスリテラシーを高める)」ためのお手伝いをすることがテーマです。

骨は、日々の良い習慣の積み重ねで、強くすることができます。骨に振動が伝わるような運動を欠かさないこと、吸収率の良い食品でカルシウムをとること、日光浴や魚からビタミンDをとること、特に骨が強くなる時期である思春期を意識して、大切に過ごすこと。例えば、「顔や手がシミだらけになるのは嫌だ」と、紫外線を避けるのであれば、代わりにサプリメントでビタミンDを取ることを選べば良いと思いますし(サケ・サンマ・イワシなどの魚ばかり毎日食べるわけにはいかないと思いますので)、運動が苦手で運動部に入らないとしても、家で縄跳びをしたり、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、という動きをこまめにすることを習慣にしたりすれば良いと思いますし、牛乳を飽和脂肪酸含有食品だから飲むのは体に良くないと避けるのであれば、無脂肪乳や豆乳を積極的に飲むようにすればいいと思います。大切なのは「避けることによって失うものがある」ことを知ることだと思います。 TeamBONEの活動を地道に続けていくことで、いつの間にか「骨にいい習慣」が広まって、色々な人が多方面から日光・栄養・運動の大切さや思春期の重要性を伝えてくれるようになるのではないかと思います。そして、色々なところで、その話を聞くことで、いつの間にか「今日は天気がいいから、外でお日様を浴びよう!」「今は、体が作られる時期だから、ジャンプしよう!」とみんなが自然に考えるようになるのではないか、いつの日か「文化」として定着するのではないかと、大きな夢を見ています。

Team BONEについてのリーフレットはこちらから https://hip.sfc.keio.ac.jp/teambone/contents/20190309_A4.pdf

コラム筆者プロフィール

坂本 優子(さかもと ゆうこ)

順天堂大学医学部附属練馬病院 整形外科 准教授

小児整形外科と骨粗鬆症などの骨代謝性疾患を専門として、こども達の骨や関節の病気の治療に携わる。ビタミンD不足の子ども達の増加に伴い、日光浴の大切さを訴えている。二児の母

慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムメンバー・Team BONE代表


健康情報コラム|vol.2 看護師目線で!女性の健康に必要なこと

【健康情報コラム】 健康情報コラムは、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムに所属する専門家などが、健康・医療に関する最新情報や健康改善に向けた対策を毎月コラムとしてご紹介します。

 

 

【アフターコロナの女性の健康支援】

月経やPMSなどに関する症状によって約半数の女性が、仕事のパフォーマンスが普段の半分以下になるという調査結果があります※1。女性の就業率が70%を超えるようになったいま、月経をコントロールすることは女性にとっても社会にとっても重要なことです。 月経の悩みを解決するのが、産婦人科クリニックの役割の一つです。産婦人科で勤務する看護師としての個人的な感覚ですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、産婦人科クリニックを訪れる女性が減少しています。私が勤めるクリニックはオフィス街にあるため、テレワークの浸透が影響しているのかもしれません。テレワークを機に、自宅の近くの通いやすい産婦人科クリニックに通院先を移し、治療を継続していればよいのですが、これをきっかけに必要な治療を中断してしまった女性もいるかもしれません。例えば企業の健診で中断している治療がないかを確認するなど、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに中断してしまった治療を再び始められるようなきっかけづくりが、今後必要ではないかと感じています。

 

【無料・定期接種は高校1年生まで!みんなで啓発・周知しよう】

一方で、中学生・高校生の来院が増加していて、特に子宮頸(けい)がんワクチンの話を聞きたいという人が例年よりも多い印象です。子宮頸がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐとされる子宮頸がんワクチンは、小学6年生〜高校1年生の女性であれば無料で打つことができます※2。子宮頚がんワクチンは自費で支払うと5〜10万円近くかかるので、ぜひ無料・定期接種を利用してもらいたいです。そんな子宮頸がんワクチンですが、全部で3回打つ必要があり、初回から打ち終わるまでに6カ月かかります。高校1年生の9月までに接種を開始しないと全てを無料で打つことができません。今年の高校1年生はそのタイムリミットが近づいています。子宮頸がんワクチン接種で来院する中学生・高校生はお母さんと来ることがほとんどです。自治体や学校だけでなく、企業を通じて働くお母さんにこういった情報を伝えられたら、もう少し日本のワクチン接種率が上がるのではないかと期待しています。

 

※1 NPO法人日本医療政策機構「働く女性の健康増進調査(2018)」全国18歳~49歳のフルタイムで働く正規/契約/派遣社員・職員の女性2000人対象のインターネット調査。

※2. HPV感染症を防ぐワクチン(HPVワクチン)は、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、定期接種が行われています。https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/

 

写真:2020年12月12日(土)「プレコンセプションケア日米合同カンファレンス」|第1部〜米国と日本のプレコンセプションケアについて〜より(慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール)

https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/pcc_report_20201212.html

 

コラム筆者プロフィール

矢込 香織(やごめ  かおり)

慶應義塾大学看護医療学部を卒業後、北里大学病院で幼児・学童期病棟、NICU病棟に勤務。医療系メディアの編集・ライターを経て、現在は産婦人科クリニックの看護師として、地域の女性の健康支援を行なっている。慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム 個人会員メンバー。

健康情報コラム|vol.1|新型コロナと医療・健康コミュニケーション

【健康情報コラム】
健康情報コラムは、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムに所属する専門家などが、健康・医療に関する最新情報や健康改善に向けた対策を毎月コラムとしてご紹介します。

<#キミはどっち「1時間に平均23回」篇>

【医療コミュニケーションの難しさ】

あなたは健康に関するデマや誤情報を見たことはありませんか? 健康に関するトピックは、医療や福祉関係のお仕事をされている方だけでなく、一般の方、特に子を持つ保護者や高齢な方ほど関心が高くなります。しかし、前者と後者の間ではもっている知識の質と量が違います。デマや誤情報にダマされないよう、できるだけ分かりやすさと正確さを兼ね備えた情報の発信を心がけている方がいる傍ら、健康や医療の誤った理解もまた増えています。 特に2020年以降、猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症では、正しい情報をできるだけ多くの人に伝えることの難しさが表面化しました。情報が若者に届いていなかったり、SNSでデマが拡散したり、外出自粛を呼びかけても次第に協力者が減ってしまったりということが散見され、ウイルスの脅威に対して一丸となって立ち向かえない状況に苛立ちやモヤモヤした気持ちを抱いている方も多いことでしょう。

【小さな改善が、大きな効果に】

私は科学コミュニケーターとして、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム※1 の新型コロナウイルス予防・啓発チーム「みんながヒーロープロジェクト」※2 に協力させていただいています。科学コミュニケーターは科学者と一般市民のコミュニケーションを橋渡しする役割を担います。 橋渡しの例を一つ挙げます。以下の文はどちらの方が分かりやすいですか? 1)感染経路は目鼻口、2)ウイルスは、あなたの手から目鼻口へ。実はどちらも同じ内容です。けれど、2の方が分かりやすいと感じたはずです。「感染」「経路」の言い方を変えただけで、印象が大きく変わります。このキャッチコピーは、チームが制作した啓発ポスターに使われました。私たちは正しい知識を伝える際、内容の正確さに注意を向けがちです。しかし表現を1つ変えるだけで、分かりやすさは大きく変わります。チームは予防や啓発を今後も続けて参ります。ぜひご期待ください。

#キミはどっち「Don’t Touch!」篇

<#キミはどっち、渋谷・原宿の交通広告>

■ポスター #キミはどっち :https://bit.ly/38n5WwI

■メイキング動画:#キミはどっち :https://youtu.be/lBI6sHo-B9Y

■「目鼻口は感染経路。#キミはどっち」CM30秒篇:https://youtu.be/vsm-fxDwMh0

 

■「目鼻口は感染経路。#キミはどっち」:日本テレビ「news zero」取り組みの紹介

 

▼コラム 筆者プロフィール

漆畑 文哉(うるしばた  ふみや) 科学エデュケーター/科学コミュニケーター 小中学校・高等学校の理科教員、日本科学未来館 科学コミュニケーターを経て、現在フリーで活動中。神奈川工科大学教職教育センター非常勤講師、静岡大学情報学部学術研究員。慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム 個人会員メンバー。|note(https://note.com/uru__/

 

■ハッシュタグ #新型コロナウイルス #医療  #健康  #誤解  #誤情報 #健康情報コンソーシアム

#キミはどっち

 

<注釈>

※1:慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム(https://www.kri.sfc.keio.ac.jp/ja/consortium/health-info/)とは 産官学連携による健康情報の創成を目的として、人の生活をより豊かで健康にする社会構築のために、健康情報獲得技術や健康情報サービス等の研究を進行し、健康情報の力を活用した未来社会を目指している。

※2:「みんながヒーロー プロジェクト(https://www.keiosfchic-covid19hero-project.com)」は、医学・環境情報学など、有志の研究者・専門家・クリエーター・学生らと協働で、新型コロナウイルス感染症予防・感染拡大防止のためのデジタルコンテンツを制作。主にオンラインを通じて世代別・段階的に情報発信している有志プロジェクトチーム。

※3:10-20代の若者を対象とした新型コロナ感染症啓発活動。若者が関心のある「メイク」「アート」を通じて感染症の基礎知識やウイルスについて学ぶ機会を提供するために、各専門医師の指導・監修のもと、健康と情報科学の研究者やクリエイター、若者らと共に啓発ツールを企画・開発した。 学生達が開発する「感染症教育シリアスゲーム」は9月リリース予定。