健康情報コラム|vol.9 「弱さ」を「魅力」に 

【健康情報コラム】 健康情報コラムは、慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムに所属する専門家などが、健康・医療に関する最新情報や健康改善に向けた対策等を定期的にコラムとしてご紹介します。

みなさん、こんにちは。

慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム※1 「みんながヒーロー プロジェクト※2」メンバー・メンタルヘルス教育プログラム講師の原匠です。

健康情報コンソーシアムでは「みんながヒーロー プロジェクト」の次なるフェーズとして2023年秋から「若者のメンタルヘルス」促進に向けた情報発信やコンテンツ制作をするプロジェクトチーム「Mental Streeech Project※3」を発足します。

発足第一弾の活動として、日本の自殺予防週間※4(9月10日〜16日)には全3回からなる「こころのコラム」の発信、10月10日の「世界メンタルヘルスデー※5」にはチームメンバーでもありプロスポーツメンタルコーチの鈴木颯人さんの 10代、20代のメンタルヘルスをテーマにした配信ライブを予定しています。

 

【「弱さ」を「魅力」に】

「今の自分が嫌いだ。こんなの思い描いていた自分の姿ではない。私って何者なのだろう。」

同世代の人たちのキラキラした姿やSNS投稿などを目にして、「自分なんて…」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか?

みなさんと同世代の小学生や中学生、高校生ともに「無気力や不安」に悩まされている人も沢山いるというデータもあります。

こんなことを書いている私は過去に「心の病」を経験した当事者です。学生時代、自分の全てが嫌になり、周りにいる人たちを信じることもできず、自分の人生を投げ出すという選択をしてしまいました。その後、精神科の病棟での入院生活を送っていた際も「今の自分は何をやっているのだろう。」とやり場のない無力感を抱え続けていたことを今でも覚えています。

周囲の方々の支えもあり、何とか大学を卒業し社会人となった私でしたが、再度同じ壁にぶつかってしまい休職させて頂くことになりました。実家で休んでいる時もまた、「こんな人生になるはずじゃなかった。」と自分のことを受け入れることができず、悶々とした日々を過ごしていました。

そんな私にとある転機が訪れ、「自分の弱さ」を受け入れて生きてみようと考えるようになりました。

「自分の弱さを受け入れることができなかった結果、今のような状況に陥ってしまった。社会を見ても自分と同じような状況で苦しんでいる人が沢山いる。」

そんな人たちの力になれるような活動がしたいと、私は自転車日本一周旅を通じた「心の健康普及啓発プロジェクト」を立ち上げることになりました。そして、過去の出来事やこれからのチャレンジについて発信を開始してみた結果、たくさんの人が私のことを応援してくれるようになったのです。

 

一連の出来事で気づいたこと。それは「弱さを見せてはいけない」という私の考えは大きな勘違いであったということです。「弱い自分には価値がない。そんな自分でいてはいけない。」と考えていた私でしたが、「弱さを受け入れて行動に移したこと」が逆に自分の魅力となっていったのです。

伝えたいことは「今のあなたをしっかりと見つめ、受け入れてほしい」ということです。人と比べるなとは言いません。たとえ比べて自分は劣っていると感じたとしても、その弱さに向き合い、前に進んでいく姿勢に人は心を動かされます。

あなたの弱さ、魅力に変えていきませんか?

そんな魅力を生み出せるよう、私たちも一緒に前進していきたいと思います。

 

次回はプロスポーツメンタルコーチの「ストレス選球眼」コラムです!お楽しみに!

<注釈>

※1:慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアムとは 産官学連携による健康情報の創成を目的として、人の生活をより豊かで健康にする社会構築のために、健康情報獲得技術や健康情報サービス等の研究を進行し、健康情報の力を活用した未来社会を目指している。

※2:「みんながヒーロー プロジェクト」は、医学・環境情報学など、有志の研究者・専門家・クリエーター・学生らと協働で、新型コロナウイルス感染症予防・感染拡大防止のためのデジタルコンテンツを制作。主にオンラインを通じて世代別・段階的に情報発信している有志プロジェクトチーム。

※3「Mental Streeech Project」 「Mental Streeech Project」は「みんながヒーロー プロジェクト」の次なるフェーズとして2023年秋から「若者のメンタルヘルス」促進に向けた情報発信やコンテンツ制作をするプロジェクトチームです。慶應義塾大学SFC研究所健康情報コンソーシアムが展開する3eevidence(裏付け)、education(教育)、entertainment(楽しみ)の3つのeの要素を軸に活動を展開していきます。

※4:「自殺予防週間」 日本では、自殺対策基本法に基づき、毎年9月10日から16日を「自殺予防週間」、毎年3月を「自殺対策強化月間」と定めて、国、地方公共団体、関係団体等が連携して「いのち支える自殺対策」という理念を前面に打ち出した啓発活動が推進されています。(厚生労働省HPより)。

厚生労働省「自殺予防週間」サイト

厚生労働省「広報の取り組み~いのち支える自殺対策~」サイト

※5:「世界メンタルヘルスデー」 世界精神保健連盟が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めました。 その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされています。(厚生労働省HPより)。

厚生労働省「世界メンタルヘルスデー2023」特設サイト

 

▼コラム筆者プロフィール 

原匠(ハラタクミ) 

メンタルヘルス教育プログラム講師として、小学生から大学生を主な対象に講演やワークショップを実施。過去にメンタル不調当事者経験から、若者が心豊かに人生を歩んでいくためのサポートをしています。 慶應義塾大学SFC研究所 健康情報コンソーシアム個人会員メンバー。